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羽毛布団の選び方

皆さんこんにちは。今年は雪少ないなーと思っていると後半で帳尻合わせてくる感じが怖いふとん屋の倅(せがれ) どーも佐藤です。

 

さて、ブログ一発目のネタは“羽毛布団の選び方”を書いていこうと思います。

というのも、皆さん意外と羽毛布団の選ぶ基準てわからなくないですか?昔友人の家に泊まった時に「この羽毛布団使ってー」と渡された布団が羽毛布団ではなく羽根(ハネ)布団だったことがあります。友人に、これハネ布団じゃん?と言うと、いや羽毛布団だよ、ハネ布団てなんだよ、結構高かったんだよ。と返されて、驚いたことがあります。まあ表示を見たら、ギリギリ羽毛布団だったんですが笑

私はふとん屋の家に生まれたので布団の違いを知る機会が多くありましたが、普通に生活していく上で、羽毛布団の違いなんて知る機会は少ないと思います。しかも改めて調べてみると本当にたくさんの選択肢があって、こりゃ迷うわーって項目も結構あって、ずっとブログに書きたいと思っていました。

 

そんなふとん屋の倅が、羽毛布団の選び方をとことん書いていこうと思います。ちょっと長いですがお付き合いください。

 

羽毛布団の選び方-目次-

 

  1. ダウン混率 (重要度★★★)
  2. 羽毛産地 (重要度★)
  3. 布地 (重要度★★★)
  4. 縫製キルト (重要度★★)
  5. グースとダック (重要度★★★)
  6. ダウンパワーとラベル (重要度★★)

 番外編 羽毛布団リフォームという選択

 まとめ


1.ダウン混率

ダウンとスモールフェザー
ダウンとスモールフェザー

羽毛の品質にはいくつかの項目があります。ここが暖かさの根幹と言っても過言ではありません。

まず、ダウン混率について。

羽毛布団は水鳥の羽根からとれるふわふわのダウンと、羽根の形を保ったフェザーという二つの材料からできています(正確には羽毛布団にはスモールフェザーを使用)。温かさでは断然ダウンの方が優れていて、ダウンがたくさん入っている羽毛布団の方が間違いなく暖かい訳です。その分高価になりがちです。

 

ではどのくらいの割合で配合するのか?寝具の規格上は50%以上ダウンが配合されていれば羽毛布団と呼べます。因みにこれ以下がブログ冒頭で話したハネ布団です。ただ、ダウンとフェザー50%ずつの羽毛布団では暖かさがイマイチですし、フェザーのパリパリ感が寝返りを打つときや手を布団に乗せたときに伝わってきて敏感な方は眠れないんじゃないかってくらいの肌触りです。

 

では逆に100%ダウンで作ればいいのでは?と思った方は鋭いです。ですが実際ダウン100%の羽毛布団なんて見たことがありません。大抵はダウン比率80~90%前後が主流です。これはなぜかといえば、ダウンはダウンボールと呼ばれるケセランパセランのような形状の天然素材です。潰せば限りなく平たくなるダウンボールをフェザーを少し配合することで元の形を保てるようになるのです。

当店で作る羽毛布団はグースのダウン混率は93%、ダックもダウン混率は93%の羽毛原料を使用しております。


2.羽毛の産地

羽毛布団の材料である羽毛の材料は主に寒い地域で生産されています。寒い地域にいる鳥の方が暖かい羽毛を蓄えやすい傾向にあるためです。

有名なところでは、フランス産やポーランド産、ハンガリー、カナダ、ロシア、最近では中国産を中心にアジア圏のものまで幅広い国で生産されています。

ただし、羽毛を取るためにダック(アヒル)やグース(ガチョウ)を育てているわけではなく、食肉として使う副産物として羽毛がとれています。

 

日本では、ダックやグースを食べる習慣がほとんどないため、日本産の羽毛というものは基本的にありません。

海外ではフォアグラ(ガチョウの肝臓)や北京ダックなどの水鳥を食べる習慣と料理が古くからあります。そのため、副産物としてたくさんの羽毛が手に入りやすいといえます。

 

ここまで読んで、じゃあどこの羽毛がいいの?、と聞かれると難しいんですが、生産国はあくまで目安だと思います。日本ではイメージの良くない中国産でも品質の良いものはありますし、ヨーロッパやカナダ産が必ずしも良いとは言い切れません。

ですが、その羽毛の原産国がどのくらい寒い場所なのかを調べることによって、どの程度良い羽毛なのかの判断材料にはなるはずです。

 

また、2016年、ダウンにも産地偽装のニュースがありました。中国産をヨーロッパ産と偽って販売していたもので、かなり悪質です。中国産のダック羽毛は低価格で流通量も多いので、おそらく業者はぼろ儲けです。しかも売ってしまえばもう確認のしようがありません。

とても残念なことですが、消費者側からは確認が難しいのが現状です。本当に確認したいなら、販売店に産地証明書を提示してもらうのもありかもしれません。産地証明書は輸入元の会社が持っています。販売店、製造会社から要請があれば出してくれます。2016年の事件を受けて、業界でも規制が強まり、販売店や消費者に証明書を求められた場合は対応するように通達が出ました。

因みに当店でのオーダー羽毛布団や羽毛布団のリフォームに使う足し羽毛は、グースはポーランド産、ダックはフランス産の羽毛を使用しております。

 


3.布地

肌触りと吸放湿性に重要なのが布地です。布地の糸の細さで、60番手、80番手、100番手など、布地の違いがあります。因みに数字が上がるにつれて柔らかい布地になります。柔らかい方が肌触りがよく、布のパリパリ感もないので良い睡眠につながります。しかし、柔らかい布地にフェザー率の高い羽毛を入れてしまうと、フェザーが突き破って出てきてしまう恐れがあります。逆に硬い布地に良い羽毛を入れると肌触りが落ちるため、せっかくの柔らかくて良い羽毛がもったいない状態になってしまいます。そのため、使う羽毛と布地の相性を合わせる必要が出てきます。

 

吸放湿性で問題になるのが布地の素材です。ポリエステルか綿(めん)かの選択肢、または配合品の布地があります。

ポリエステル布地のメリットは軽いこと。それから安価なことです。

綿(めん)布地のメリットは吸湿性、放湿せいに優れていることと、肌触りのよさです。

  

軽さと安さが魅力のポリエステル素材ですが、発汗の多い子供や男性は特に綿素材をお勧めしたいところです。

軽さについても、2-3kg程度の羽毛布団で、布地を変えて重量差は200-300g程度です。体に乗ってくる重さはこの半分以下ですので、予算が許すならば、綿100%を選んだ方が後悔しません。

当然、ふとんに掛けるカバーも綿100%をお勧めします。


4.縫製キルト

縫製に関しては文章にしづらいので、まずはこちらの画像を見てください。

羽毛布団の断面図です。上が立体キルト(一層)、下が二層キルトです。

立体キルトの凹んでいるところが布団外気が伝わりやすい言わば弱点です。この弱点を克服するために生まれたのが二層キルト構造というわけです。

二層構造の方が縫製や羽毛充填に手間がかかるので高価になります。暖かさを保つなら二層構造ですが、価格を取るなら立体キルト(一層)となります。こちらは住んでいる地域、家や部屋の気温で選んでもらえれば良いと思います。


5.グースとダック

羽毛布団にはグース(ガチョウ)とダック(アヒル)の2種類の水鳥の羽毛が多く使われています。

日本ではあまり見かけない鳥ですが、海外の童話や料理によく登場します。金のガチョウや、みにくいアヒルの子など、ヨーロッパでは昔から身近な鳥だったことが伺えます。

グース(ガチョウ)は元々ガンという鳥を家禽化(鳥の家畜化)して誕生した鳥です。ガンは日本でも渡り鳥としてやってきます。小学校の国語の教科書に「たいぞうじいさんとガン」という話が載っていたのを今でも覚えています。(小5くらい)アヒルは公園の池なんかにいるのを見かけたことがあるかもしれませんね。

 

グースはダックより大きく、取れる羽毛も良質で暖かいのですが、大きくなるまでに時間がかかるので、グースの方が一般的には高価です。一部、アイダーダックというアイスランド原産のとんでもなく高いダック種がいますが、希少種故に目ん玉飛び出るくらい高いので今回は割愛します。

 

また、ネットの口コミなどで安い羽毛布団は獣臭いという書き込みを見たことがあります。グースは草食、ダックは雑食のため、脂質が多く獣臭が強くなる傾向にあります。

匂いに敏感な方や、ペットを飼っている方は、グースを選ぶ方が良いでしょう。羽毛の暖かさもグースダウンのほうが上です。


6.ダウンパワーとラベル

羽毛布団購入時に、ダウンパワーという数字を見かけることがあるかもしれません。ダウンパワーとはダウンの膨らむ力を表したもので、製造メーカーでは販売時にこの数字を提示しているメーカーが多くあります。ダウンパワー350dpや、ダウンパワー400dpなど、数値化されているため、比較しやすい判断材料になります。当店でも充填するダウンはダウンパワー400のダウンを使用しています。

ただし、これにも落とし穴があるので、数字だけで判断はできません。

例えば…

 ①ダウンパワー400dp 充填量1,200g ダウン率93%

 ②ダウンパワー440dp 充填量1,100g ダウン率90%

 

この二つの羽毛布団、どちらが暖かいかというと、ダウンパワーが②の方が高くても正解は①の方が暖かいということになります。ダウンに比べ、フェザーには保温する力がほとんどありません。ダウンの量は暖かさに直結します。

つまり、ダウンパワーで上回っても、ダウン率や充填量が低ければ、暖かさは変わってしまうのです。見るべきはダウンパワーだけではなく、充填量、ダウン混率の総合的な判断が必要になります。


ダウンパワーとは別に、「ゴールドラベル」という指標が付いている羽毛布団もあります。ゴールドラベルはダウンパワーが基準の一つになっているので総合的に判断するものとなっています。日本羽毛製品協会が定めたもので、上からプレミアムゴールド、ロイヤルゴールド、エクセルゴールド、ニューゴールドラベルと4段階あります。

ダウンパワー以外にダウン混率を定めているので、ダウンパワーだけ高くてもダウン混率が低ければプレミアムゴールドやロイヤルゴールドが取れません。

良い仕組みだとは思うのですが、大手でも採用していない企業があったり、うちのような小さな店舗でコツコツ羽毛布団を作っているお店では取得が難しいなど、必ずしも平等な制度ではありません。言えば付けられるラベルでもないため、ラベルの使用料も販売価格に転嫁されてきます。

 

 

それから個人的には、ネーミングに誤解が起きそうなところが気になります。

一番下のニューゴールドラベルはダウンパワー300以上ダウン混率50%以上です。はっきり言って羽毛布団として成立するギリギリのラインで、人にお勧めするにはかなり力不足です。しかし、名前はニューゴールドラベル。★3つ。もし何も知らない人が羽毛布団を買おうとして、「この布団はニューゴールドラベルを取得した羽毛布団なんですよ。」なんて言われたら、なんかよくわからないけどゴールドだし★3つ付いてるし良さそう!となります。因みに一番上のモデルのプレミアムゴールドは★6個。もう星の数の概念がわかりません。

先日テレビショッピングでも「★3つを獲得した信頼の羽毛布団!こんな布団はなかなかありません!」と、1万円台の布団で言っていましたが、いや、★3は一番下やぞ。と思わずテレビにツッコミを入れてしまいました。

 


番外編 羽毛布団のリフォームという選択

最後に少し羽毛布団のリフォームについて話をします。

簡単に言うと今使っている羽毛布団の中身を再利用して、新しい布地に入れなおしたり、目減りした羽毛布団に羽毛を足したりするというものです。当店では新しい羽毛布団の販売数よりも、羽毛布団のリフォームの注文の方が多いのですが、世間的には知名度はまだまだ低いのが現状です。

今も昔も羽毛という素材は高価なものでした。そのため、欧米ではメンテナンスしながら使うことが当たり前だったんですが、戦後に羽毛布団が広まった日本では、高度経済成長と共に直すよりも買うが先行した感があります。良い羽毛布団ならばメンテナンスを定期的に行い、布地を変えたり、減ったかさ分の羽毛を足したりすることで、何十年と使い続けることが可能です。今使っている羽毛布団を買い替える選択肢だけではなく、メンテナンスをしながら使い続ける“羽毛布団のリフォーム”も、良い羽毛布団をお使いであれば候補にしていただきたいと思います。

まとめ

羽毛布団にはピンからキリまであります。安いには安いなりの、高いには高いなりの理由がある!

 

ダウン混率は最低でも80%を。できれば90%以上が理想!ダウン混率50%なんて論外です。

 

羽毛産地は目安程度に。寒い国の羽毛の方がよいくらいの認識でOK。日本産はまずない。産地偽装には注意。

 

布地ポリエステルは軽くて安価。綿は吸湿性、放湿性が良く肌触りも◎。代謝の良い方は綿100%がおすすめ。蒸れません。

 

立体キルト(一層式)と二層式がある。寒い地域なら二層式がおすすめ。

 

鳥の種類はグースの方がよい羽毛が取れる。ダックは安価だが暖かさではグースが上。匂いに敏感な方はグースがマスト。

 

ダウンパワーやゴールドラベル等の表記は総合的に判断を。★3つだから良い布団!では決してない。安い布団にはそれなりの理由がある。

 

良い羽毛布団ならその後にメンテナンスしながら長く使うこともできる。

 

といった感じです。いかがだったでしょうか。

寝具、特に羽毛布団は安い買い物ではありません。それこそ1万円台から10万円を超えるものまで、玉石混交状態です。

今回のチェックポイントが製品によっては表記のないものもあるかもしれませんが、大体は買う前に確認できる項目です。購入時に妥協できる点と、譲れない点を明確にしておくと、後悔のない買い物ができるはずです。人生の1/3は布団の中ですしね。

 

今回書いた内容が誰かの布団選びの一助になれば幸いです。

 

 

佐藤